ヴィレの個人用呟き備忘録。美術や読書なんかを中心にまとめるよ。
読むのならあまり信用しないで、気になったら自分で調べた方が良いよ。
飽き性だからいきなりやめるかも
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岩波書店、石井美樹子「 聖母のルネサンス―マリアはどう描かれたか」読了。受胎告知、ミルクスープの聖母、書を持つ聖母の3章で構成されている。著者は美術史家ではないらしいけど、内容は濃くて読み易かった。ありがちだけど図版が白黒なのが残念。図版も多くて参考文献も一杯なのに
「ミルクスープの聖母」はダヴィッドが描いた作品で、幼子イエスが手にしている木製のスプーンに着目して論を展開している。イエス降誕の時、マタイ書で東方三博士は黄金、乳香、没薬を贈り物として渡しました。ルカ書でも同様に羊飼い達が礼拝して贈り物を渡すんだけど、これは地方によって違う。時系列は羊飼いの礼拝→東方三博士の礼拝
ダヴィッドは「エジプト逃避」でもスプーンを持ったイエスを描いている。こちらのイエス様はちょうど授乳の最中で「ミルクスープの聖母」と同様にスプーンとミルクが対になっている図になる。ここから著者は子(スプーン)と母(ミルク)のシンボルなのでは?と論じていく
羊飼いだから黄金みたいなものじゃなく素朴なものなんだけど、その中にスプーンが入っている事もある。中世・ルネサンスの絵画の伝統として、イエスの持つ
ものはイエスの象徴(アトリビュート)である。ダヴィッドは「ミルクスープの聖母」とそっくりの「さくらんぼを持つ幼子と聖母」を描いている
スプーンがさくらんぼに変わったこの絵、さくらんぼはイエスの象徴で、羊飼いもさくらんぼを渡す地方もある。これらと同じ構図のダヴィッドの作品は7つ現存しているらしい。当時人気だったのかな。そしてどうやらこのようにスプーンを持たせたイエスを描いた画家はダヴィッドとダヴィッドに影響受けたベニングだけとか
マリアの徳性はキリストの母である事。授乳の聖母はマリアの役割を明確にするイメージだった。聖母マリアはキリストの母だけでなく、万人の母である。フランドル地方にはマリアの乳の聖遺物がまつられているとこもあるとか。奇蹟的な治癒力があると信じていたらしい
だけど例えばフーケの「聖母子」みたいに当時の流行を取り入れたりして宗教性が薄れて宗教画の意味がなくなってきた。その上処女のはずのマリアから母乳が出るのはおかしいなんていう非難も受け、スプーンの意味も忘れ去られていってしまったみたい
羊飼いが贈るスプーンとフラスコのセット。離乳食用の食器に神学的な意味はあるのか。フランドルの画家はスプーンのある降誕画や聖母子像を描いている作品
が多い。スプーンは王冠、王笏、宝珠と共に即位の儀式の宝の一つだった。でもスプーンが王の中の王を象徴するという考え方は東方生まれなんだと
そこからスプーンは賢者、癒し手、王の中の王、旅人の道しるべ(中国最古の羅針盤は匙の形をしているらしい)、救い主のシンボルであると言っているんだけ
ど、戴冠のスプーンはイギリスの例を出してるし、中国の例も出してるし、そりゃどっちもダヴィッドの絵よりは古いものだけど釈然としないんだよね
またスプーンは愛と豊穣のシンボルでもある。くぼんだ部分が女性、柄が男性を表し、女性性と男性性が合体した形のスプーンは豊穣のシンボルだった。まとめればまとめるほど逆にただの離乳食用の食器だったんじゃないかって思ってきたな…むしろ噛むためのおしゃぶりとかさ。それはないか
スプーン論も面白かったけど、書を持つ聖母のとこの方が面白かったな。時代と共にどんどん大きくなっていく聖母が読む書物。教育者である母の象徴。男性の権威としての象徴。識字と女性の社会進出の関係とかね。女の人が書いた論文っぽい感じだった
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