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ヴィレの個人用呟き備忘録。美術や読書なんかを中心にまとめるよ。 読むのならあまり信用しないで、気になったら自分で調べた方が良いよ。 飽き性だからいきなりやめるかも
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フランス短篇傑作選 (岩波文庫)

岩波文庫、山田稔「フランス短篇傑作選」読了。かなり昔に珍しく新品で買った岩波の本なんだけどもしかしてもう絶版なのかね?中身すごく豪華だし値段も700円で超 お買い得なのに、勿体ないな…

ヴィリエ・ド・リラダン「ヴェラ」、アナトール・フランス「幼年時代」、アレー「親切な恋人」、シュオッブ「ある歯科医の話」、プルースト「ある少女の告白」、シャルル=ルイ・フィリップ「アリス」、アポリネール「オノレ・シュブラックの失踪」、ラ ルボー「ローズ・ルルダン」、シュペルヴィエル「バイオリンの声をした娘」、モーロワ「タナトス・パレス・ホテル」、グリーン「クリスチーヌ」、バザン「結婚相談所」、イヨネスコ「大佐の写真」、ギャリー「ペルーの鳥」、デュラス「大蛇」、デオン「ジャスミンの香り」、デュヴェール「さまざまな生 業(抄)」、グルニエ「フラゴナールの婚約者」の18編収録。

短くて読み易いし訳も上手。「ヴェラ」は腹上死してしまった奥さんの幻を見る旦那の話、リラダンって「未来のイヴ」の人だよね「イノセンス」で見た。「親切な恋人」は足が冷たいって 言う恋人のために自分の腹切って寒いならここに足を入れなよっていう…ネタばれもネタばれだけど。「どうだ明るくなっただろう」のAA思い出した

「ある歯科医の話」悪くないコメディ。ああいう皮肉っぽいの仏文学っぽい。「アリス」ママが大好きなアリスの家に弟が生まれて…という話。割とブラック ユーモア、長子はいつだって必死よなぁ。「ローズ・ルルダン」ガールズラブって奴ですね、回想形式というのがまた良いですね

「大蛇」なんだこれ、75過ぎの老婆が若い女の子に下着姿を見せる話、言いたい事はわかるがなんだこれ、そんなに嫌いじゃない…「ジャスミンの香り」やり取りが可愛い。この本全体的に明るい話少ないが、これは明るい

短編は「そう来るか」的な面白さがあるのとすぐに読めるのが良いね。これもバベルシリーズに入れても良い位奇譚めいたものが多かった。奇を衒うというか、誇張しているというか、思想めいたと事か、そういう所も仏文学好き
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La Biblioteca di Babeleシリーズ第21巻、A.マッケン「輝く金字塔」読了。ラヴクラフトに似てるなぁと思ったらラヴクラフトが影響受けてた訳ね。「コズミックホラーを最高の芸術にまで昇華した創作者」と言われてるけど、宇宙と言うより黒魔術的ななんか…

「黒い石印のはなし」「白い粉薬のはなし」「輝く金字塔」の3編収録。前2編はどうやら「三人の詐欺師」という本の中の短編らしい。まぁ、タイトルも似てるしなと思ったら別にそういう縛りがある訳でもなかった。「輝く金字塔」よりもどちらかと言えばこっちの方が好きだな

ボルヘスによるとマッケン作品の定義は幾つかあるとの事「悪の存在」「かつてイギリスに住んだ幾多の民族の引力」等。悪というのはラヴクラフト作品にも出 てくるような感じの善の反対というより、闘う相手的な意味。民族の引力というのはマッケンがイギリスの中でもウェールズ生まれという事と関係する

物語の構成が、一つの謎が生まれそれを解決しようとすると恐ろしい目に遭うというスタイルで少し話が読めてしまう。ちなみにこのシリーズは翻訳者のあとが きがあるんだが、訳者南條竹則氏がお屠蘇の酔いが覚めずあとがきに書く事が思い付かないという訳で「儀式」という短編込み。これ6月出版だったぞ
電子書籍、有島武郎「カインの末裔」読了。聖書を全然知らない人は読む前に少しの素地が必要で、すなわちカインとは誰か?という事。旧約聖書創世記第4章に書いてあるが、アダムとイヴの息子でアベルの兄、農耕を営み、嫉妬からアベルを殺した人類最初の殺人を犯した人物

読んでみた印象としては「想像してた物語と違う」だった。個人的にはもっと聖書聖書した物語だと思っていたけど、文中にはカインのカの字も出てこないの で、カインとアベルの物語を全く知らない人にとってはタイトルの意味理解せずに終わってしまうと思う。と言っても普通の人の聖書の素地ってどんなの

主人公は仁右衛門という農夫、小作人として仕事を得、妻と赤坊と馬を連れて北海道へとやってくる。だが、作物は思ったように収穫できず、金がないので赤坊 は病気で死に、(もともとそういう人だったが)仁右衛門は暴れ、村で行われた競馬に自らの馬で酸化するものの馬は負傷し…と話は続く

仁右衛門がカインの末裔であるとすれば農耕が上手くいかない事は仕方のない事なのです、カインが土地を耕しても最早彼のために土地は実を結ばないのだか ら。物語の最後は仁右衛門が村から去っていく場面で終わるのだが、それも仕方がない、カインは地上の放浪者になる運命だから

カインの子孫は聖書の上ではエノク、イラデ、メホヤエル、メトサエル、レメクと続いていき、一応その後の子孫は書いてない(はず)なので末裔はレメクにな る。「カインのための復讐が七倍ならば、レメクのための復讐は七十七倍」カインの末裔は復讐心を燃やしながらも生きねばならぬ宿命を背負っている]

共同体で生きるには規律がある。カインの供物は何故受け入れられなかったか、そこにきっと理由はないだろうし、むしろ理由がない事が理由である。気に食わ ぬとも受け入れねばならぬ事はあるし、それが運命だ。仁右衛門は様々な運命を背負っても生きていく逞しさのある男だと思う。良くも悪くも

どうでも良いが僕は誰もがカインの末裔ではないと考える派なので(アダムとイヴの間に子供は一杯いただろうし)カインの末裔に生まれる運命にあったのなら そこは彼の憐れむべき点だと思う。そもそもカイン一族は洪水で滅ぼされてしまうからなぁ…対応させながら読むのは面白いが読まなくても良いかな…
電子書籍、坂口安吾「堕落論」「続堕落論」「思想と文学」「文学のふるさと」「死と影」読了。なんとなく目を引いた題名からピックアップして読んでみる。 評価の高い「堕落論」だが、正直自分はよくわからなかった。それは自分が端から堕落に落ち着いてしまっているからか、這い上がる事を忘れたからか

「人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くで は有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる」堕落する事に救いを見出す

要するに読む時期が悪かったのであろう。今の僕は堕落しきっていた時期とは少し外れているように思うし、少しは光を見る事に努めてみようと思い始めた。天 皇がどうのだとか戦争がこうのだとかは、何も言えない。今の世に生きている戦争を体感していない自分にとっては下手な言及はできない

となると「わからない」のは天皇や戦争の事だけで、根本を見るとこの人の考え方好きだ。弱さを否定した所で強がりにしかならないし、弱さは受け入れてこそ の強さだと思う。多分もっと早い時期や堕ちてた時に読んでたらすごく救われてたと思うよ。ちょっと頑張ろうと思ってる時は向かないけど
電子書籍、小林多喜二「蟹工船」読了。数年前、ワーキングプアや非正規労働者という言葉が顕著に話題になっていた時に「現代の蟹工船」という意見が度々出 ていた。その時から多少興味は湧いていたものの、まだ日本文学アレルギーが抜けず、意味すら調べる事もなく、自分の中で言葉だけが先走っていた

読んでみて「現代の蟹工船」の意味が理解できたような気がする。だけど、ワーキングプアや非正規労働者よりも、今現在はもっと「蟹工船」に近しい仕事をし ている人達が出てきてしまっている、ように思える。この小説には明確な主人公がいない故に、全体としての労働者視点で書かれている

労働者のなんと力強い事か、現代の蟹工船、労働者はそれ程のバイタリティはないだろう。ストライキという言葉は最早死語と化し、ブラック企業という言葉が 生まれ、労働者は苦難を改善するよりもそこに順応する道を選択してしまった。そして目に見えない矢で貫かれ、自らを貫き、死んでいく

救いを残したラストだったが、果たして現在に対応させるとどうなるのか。蟹工船から80年以上経った現在、苦難に順応する事に慣れてしまった労働者に残さ れた希望とは何なのだろう。学生やニートも含む若者全般は労働に対する無気力症候群にも似た症状を呈しているのではないかとも思う
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